古絵葉書 第六回奥羽六県連合共進会記念
4年ほど前に「第10回関西府県連合共進会」の絵葉書を紹介したことがありますが、当時は日本中で地方博覧会が催されていたようです。
最近入手した絵葉書もそのような地方博覧会の記念絵葉書でした。
東北地方の地方博覧会「奥羽六県連合共進会」の第六回開催記念絵葉書になります。
少し調べてみますと、「奥羽六県連合共進会」は明治27(1894)年に宮城県仙台市で第一回が開催され、絵葉書の第六回は明治41(1908)年4月11日から5月20日まで福島県福島市で開催されました。各県から様々な産業品が持ち寄られ品評が行われています。そうして相互に産業を発展させていくという趣旨であったようです。実際に記録(「奥羽六県聯合共進会事務報告 第6回 -国立国会図書館デジタルコレクションより」)に目を通しますと、かなり詳細に品評が行われており、これが単なるお祭り騒ぎではなかったことは明らかです。
と、次に絵葉書の絵柄について考えようとしたところで、「あれっ?」と気になったことが...
絵葉書のキャプションをよく見ると、「岩手県麗松会発行」とあります。はて、福島県開催ではなかったか...
そこで「岩手県」と、絵柄に出てくるおそらく芸妓の写真に書いてある「幡街」の文字、その他いろいろ検索していきますと(「麗松会」では検索にヒットしませんでした)、ほどなく理由がわかりました。
「盛岡芸妓」のサイトにヒント(と、言うかほぼ答え)を見つけたのです。
サイトから引用してみますが、次のように書かれていました。
「盛岡芸妓(芸妓)とは、踊りや長唄、常磐津などの芸ごとを身に着け、お座敷などで芸の披露とおもてなしを行う女性のことです。その芸は明治41年の東北6県連合共進会演芸の部で優勝しているほどで、全国的にもレベルが高いことで知られていました。」
なるほど、まさしく「第六回奥羽六県連合共進会」のことが書かれています。そこの演芸の部で優勝した記念として、これら絵葉書は岩手県で発行されたもののようです。(麗松会については不明ですが、もしかしますと当時の盛岡の花柳界にあった組織名かもしれません。絵柄全体のデザインは明らかに三味線です)
そうしますとここで写っている芸妓たちは福島で踊った(唄った)芸妓たちなのかもしれません。それならば、このような絵葉書になることは誉れ高いことだったでしょう。
ちなみに「幡街」というのはレファレンス協同データベースによると、「岩手県盛岡市には、八幡町周辺の幡街(ばんがい)と、本町を中心とした本街(ほんがい)の二つの花街があった。八幡町は江戸時代から続く花街で、本町は江戸時代には御用商人の町として栄え、明治以降に花街としても賑わうようになった。主にこの二つの町の料亭の宴席などで踊りや長唄等を披露し、おもてなしを行っていたのが盛岡芸妓(芸者)で、その芸は明治時代から全国的にもレベルが高いことで知られていた。」とありました。(引用させていただきました)
ですので、さしずめ岩手県代表盛岡幡街チームといったところではないかと思います。
絵柄の写真のひとつに「中の橋通 萩野鉄瓶店」というものがありました。ここだけポツンと鉄瓶店です。盛岡で鉄瓶というと、南部鉄器でしょうか。もしかするとと思い、先に述べた奥羽六県聯合共進会事務報告をせっせと繰りますと、金属製品の部で3等賞を取った生産者の中に「鉄瓶 岩手県盛岡市呉服町 萩野◯三(読み取れず)」の名が記されていました。呉服町とは現在の中ノ橋通1丁目にあたるそうですので、概ね間違いないのではと思います。受賞記念に絵葉書に載ったのでしょう。(もっとも1等賞では「湯釜」として小泉仁左衛門の名がありました。南部鉄器の歴史を紐解きますと小泉家の名が必ず出てくる大家のようですから、これは別格なのでしょう)
余談ですが、品評の中で南部鉄器全体に言及されています。意訳ですが「さすがの南部鉄器ですが、ネームバリューに奢って手を抜いていませんか。不良品をごまかしたような作品も展示されていましたよ。なので厳しい評価としました」という主旨が述べられていました。
そのような中で受賞したのですからやはり誇って良いことだと思います。
ここに写っている芸妓の方でご存命の方はいないかもしれません。しかし先に引用させていただいた盛岡芸妓のサイトには、いまでも連綿と文化の継承が行われていることが書かれています。
このような文化に触れてみる機会もあれば良いな、と思いました。
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