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2019年9月22日 (日)

古絵葉書 デリゴール飲んだ子供に弱者なし -戦前の粉乳について-

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 大正後期の絵葉書と思われます(消印が読めない)。

 ネットを検索しておりましたら一つの論文に目が留まりました。
 「機関誌『子供の世紀』にみる乳幼児を取り巻く育ちの環境 ―1923 年~ 1926 年の広告記事に着目して―」という駒沢女子短期大学の小山祥子先生の論文です。
 大正後期から第二次世界大戦中にかけての『子供の世紀』という機関紙に掲載された広告に注目し、当時の乳幼児のおかれた具体的な状況を考察したものとなっています。
 そこから見えてくることは、乳幼児の疾病に関する医薬品、栄養剤、疾病を予防する衛生商品などの広告の増加が当時の乳児死亡率の高さを裏付け、乳幼児の発育不良や栄養不足の状況を映し出している、というものでした。

 需要が先か供給が先か、経済学のことはよくわかりませんが一応ケインズは需要が先としているようです(私の生半可な知識です。あまり真に受けないでください)。必要があるから商品を販売する(売れる)というのはわかりやすい流れだと思います。
 大正期以降、乳幼児の健康が注目され始めたのはそれだけ乳幼児の生育環境が良いものではなかった、という証左になるのでしょうね。

 で、本題の「デリゴール」についてです。結論から言うと粉乳(粉ミルク)です。栄養価の高いもので育ったということなのでしょう、絵柄の少年はデリゴールを抱きかかえながら重そうな薬缶(やかん)を持ち、犬に引っ張られても平気です。服装からして冬と思われますが寒そうには見えず汗までかいています。デリゴールおそるべし。まさしく「デリゴール飲んだ子供に弱者なし」です。元気いっぱいに育っているではありませんか。

 ...ですが、
 水を差すようで申し訳ないのですが、同じくネット上で見つけた「粉乳ノ指定使用量ニ關スル疑義」という日本医科大学小児科学教室の上林唯郎先生が書かれた論文(昭和16年)によると、各社の粉乳(デリゴールを含めて)を比較して「現在販賣サレル粉乳ガ其ノ組成ニ於テ不統一デ,製造目標ガ各自ノ思フママデアリ過ギル事ト,從ツテ,各會社ガ指定セル使用量ガ或場合ニハ全ク不合理デアツタリ,私斷ニ過ギタリシテ居ル事ガ明ニ判ルト思フ。」と。
 かいつまんで言いますと「市販の粉乳はかなりいいかげんだ」と言っておられます。脱脂乳については特に辛辣で「牛乳中ノ揮發性脂肪酸ニ考慮ヲ拂ツタモノト善意ニ解シテモ,脱脂ニ伴ツテ除去サレル脂肪夾雜物タル「リポイード」ハ滿足シ得ルデアラウカ,尚ホ脂溶性「ビタミン」ノ含有状態ハ如何デアラウカ」と述べ、最終的には牛乳を代用母乳にするには時期尚早、むしろ牛乳は牛乳として供給した方が良いんじゃね? とさえ言っておられます。
 
 先生は脱脂粉乳嫌いなんですね。(絵柄のデリゴールは「クサラヌミルク」ですので脱脂粉乳です)

 まあ、結論では粉乳の規格統一を急げ、と述べておられますから全面否定ではないですけれども。


 長々と蘊蓄しましたが、実はこのデリゴールについて謎が残ってしまいました。

 子供の抱えている缶は「DARIGOLD」と書かれていますので、ダリゴールドと読むのが正しいんじゃないの? と思って検索しましたら、米国の「ダリゴールドファームズ」という大手乳製品メーカーが現在も存在しているではないですか。森永ミルクしか知らない(良い意味でも悪い意味でも)私には初耳のメーカーでした。

 そしてホームページで発見してしまいました。(無断で引用します。怒られたら消します。悪い考え方です)
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 絵葉書の少年が抱えているミルク缶とそっくりな製品です。なるほど、米国産の舶来品なのですね。それは健康に育つに違いありません(舶来品信仰)。

 謎といったのはこの舶来品を輸入販売していたのが、青木嵩山堂(あおきすうざんどう)という出版会社ではないのか、という点です。

 絵葉書の表面中央に印刷されている青木嵩山堂の文字は、絵葉書を作製したのがこの会社であることを示しています(スタンプの方じゃないですよ)。ネットで確認できたデリゴールドの広告(画像の引用はしません。戦前の練乳、粉乳で検索されれば見ることができると思います)でも「米国ワシントン酪農会社日本支那総代理店 青木嵩山堂」と書かれているところから間違いないでしょう。

 でも青木嵩山堂は大阪の出版会社で大正10年頃に廃業しているのです。(Wiki先生曰く)

 出版業を廃業後に商社みたいなことを始めたのかなあ。

 謎に感じたのはそういうことです。
 いつか何かの拍子にわかるかもしれません。それまで待ちましょう。

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